マーケティング戦略は何から手を付けていいかわからない、なんとなく実行してはいるが実はよくわかっていない、不安を抱えているWeb担当者さんは多いのではないでしょうか。
今回はマーケティング戦略の全体像を掴んでいただくために、そもそもの説明、必要とされる背景、実行手順、使えるフレームワークなど、知っておきたい情報をひとまとめにしました。マーケティング戦略に取り組むきっかけになれば幸いです。
1. マーケティング戦略とは
まずはざっくりマーケティング戦略の概要を掴んでいきましょう。
マーケティング戦略とはを一言でいうと「自社商品やサービスの売上をあげるために、自社商品やサービスをどのように販売するかを考えること」となります。売上をあげるという目的のために、どんな売買活動をすればいいか調査分析して戦略を検討するのです。
1-1. マーケティング戦略でやることって?
マーケティング戦略でやること、調査分析する内容もとてもシンプルです。
自社商品やサービスを理解して、
買ってくれるユーザーを見つけて、
競合に勝てる部分をアピールする。
様々な条件が絡み合うため複雑に見えてしまいがちですが、やることはいたってシンプルなのです。
1-2. マーケティング戦略は小説や物語を書くことに似ている
マーケティング戦略は、例えるなら小説や物語を書くことに似ています。ユーザーという主人公が、自社商品やサービスを購入するまでのストーリーです。
ユーザーの人物像や背景、商品やサービスとの出会い、購入を決意するまでの気持ちの変化……ご都合主義な無理やり設定で繋げたりせず、伏線もしっかり散りばめて魅力的な物語をつくる。それにはきっと多くの時間がかかることでしょう。マーケティング戦略も時間をかけて集めた情報や数値から、ベストな戦略(物語)を組み立てているのです。
どうでしょうか、マーケティング戦略がなんとなくでも掴めてきたでしょうか?
2. マーケティング戦略が必要な理由
概要が掴めたところで、今度はマーケティング戦略が必要とされる背景について考えてみましょう。自社商品やサービスの売上をあげるために、なぜ自社やユーザー、競合への理解が必要なのでしょうか?
①顧客数が減っているから
少子高齢化に伴う人口減少により、消費を支えている顧客数は年々減少してきています。業界別にみれば市場拡大をしていても、頭数は減少しているのです。少ないパイの奪い合いをしていることに変わりありません。
②ニーズが多様化しているから
昨今、価値観やライフスタイルの多様化が進んでいます。顧客の興味・関心なども細分化され、見たいものだけを取捨選択する時代になってきました。
画一的な提案では顧客に選ばれなくなってきているのです。顧客一人ひとりのニーズに寄り添った提案が必要となってきています。
③情報が溢れて処理できる量を超えているから
スマートフォンやGoogle検索などの性能向上に伴い、私たちが日々触れる情報量も膨大な量になってきています。図のように「消費可能情報量」はほとんど変わらないのに、「選択可能情報量」は右肩上がりで増加しています。
処理能力の限界を超えた情報はどうなるか?必要なものだけが選択され、残りは捨てられるようになるのです。

平成18年度情報流通センサス報告書(総務省)より
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/ic_sensasu_h18.pdf
市場の顧客は減り、対応するべきニーズは増え、情報をだしても埋もれるばかり。このような市場環境でも「顧客に選ばれる」ためにマーケティング戦略が必要なのです。
3. マーケティング戦略と販売戦略(営業戦略)の違い
マーケティング戦略を理解していくと、販売戦略(営業戦略)と何が違うのだろう?という疑問がでてきます。この違いはずばり「責任範囲」です。
マーケティング戦略の責任範囲
経営目標(KGI)~営業支援(SFA)までを1つの流れとして数値目標を管理します。いうなれば「ワンストップ」、かなり広い範囲に責任を持ちます。
販売戦略(営業戦略)の責任範囲
一般的に販売(営業)フェーズのみの管理を指します。責任範囲は組織によって多少変動するものの、「分業」として役割分担されている場合が多いのではないでしょうか。
代表的な部門や役割 | マーケティング戦略 | 販売戦略(営業戦略) |
現場(営業、店舗) | ○ | ○ |
デジタルマーケ(Web) | ○ | △ |
商品開発 | ○ | ✕ |
ブランド(イメージ) | ○ | ✕ |
経営(利益) | ○ | ✕ |
マーケティング戦略と聞くと、デジタルマーケ(Web)部門だけでやるものと思われがちです。しかし実際に成果を出そうとすると、経営層を巻き込んで部門間を横断する必要性に気づくはずです。
4. マーケティング戦略立案の手順、分析方法
おまたせしました!ここからは実務で使えるノウハウをお伝えしていきます。
マーケティング戦略に関するを検討するためにはどんなステップが必要なのか、具体的な手順を書き出しています。まずはざっくりとでいいので、全行程の流れをイメージしていきましょう。
- 自社の商品・サービスを言語化する
使えるフレームワーク
・4P分析
・SWOT分析(内的環境の要因) - (自社の商品・サービス を買ってくれる) ユーザー像・買うまでの気持ちの変化・買う理由を言語化する
使えるフレームワーク
・ペルソナ
・カスタマージャーニーマップ
・STP分析(セグメンテーション、ターゲティング) - 競合に勝てる部分を見つける
使えるフレームワーク
・3C分析
・4C分析
・SWOT分析(外的環境の要因)
・STP分析(ポジショニング) - STEP1,2,3 の再確認して戦略の “ありなし” を総合的に判断する
使えるフレームワーク
・SWOT分析 - 分析結果に沿った最適なマーケティング手法を検討する
・集客(SEO、広告、SNS、オフライン)
・ランディングページ
・問い合わせフォーム
・SFA - 現状とSTEP5の差分を洗い出して実現可能なラインを見極める
・Googleアナリティクス
・Search Console
・サイトストラクチャ
・現場やユーザーからのヒアリング
・SFAの数値
・業務フロー
・マーケティング戦略にかけられる予算 - 計画を立てる(目標設定、スケジュールなど)
・ロジックツリー(KPIツリー)
・ガントチャート
・売上計画 - 実行
- ふりかえりをして再計画
使えるフレームワーク
・PDCA
工程のほとんど調査、分析、検討ばかりですね。マーケティングと聞くと一見華々しいイメージがあると思いますが、実際はこのように泥臭い作業ばかりしています。
5. マーケティング戦略のフレームワーク
マーケティング戦略の調査、分析、検討の際に使えるフレームワークを厳選してご紹介します。枠を埋めていくだけで「戦略立案」の品質を押し上げてくれます。プロのマーケターも使っている手法なので、是非使ってみてください。
フレームワークとは
ビジネスで使える共通の思考方法です。過去有効だったひらめき、発想、気づき、発明などを体系化し、誰でも再現できるようにテンプレート化したものです。このフレームワークを埋めていくだけで、天才の思考をなぞることができるのです。先人の方々には感謝しかないですね。
4P分析

自社商品・サービスについて、4つの視点から言語化するフレームワークです。「企業目線」で考えることがポイント。作り手の想いを意識して書き出しましょう。ここででてきたフレーズはWebサイトや広告でも使えます。
Product | 商品・サービス(なにを売るか) | ブランド・品質・デザイン・パッケージ・サービス内容 など |
Price | 価格(いくらで売るか) | 通常時の価格・値引き・手数料・取引条件 など |
Place | 流通(どこで売るか) | 営業日・営業時間・問い合わせ注文方法・決済方法・販路 など |
Promotion | 販売促進(どうやって知らせるか) | PR・広告・セールス など |
4C分析

4P分析同様、自社商品・サービスについて、4つの視点から言語化するフレームワークです。こちらは「顧客目線」で考えることがポイント。4P <-> 4C を比較しながら書き出しましょう。
CustomerValue | 顧客価値(顧客が感じる価値とは) | 楽しい、優越感など実利以外にも感情面に着目 |
Cost | 顧客の費用(顧客が妥当と考える費用とは) | 顧客の全コストの内訳からみた相対評価・心理的時間的コストにも着目 |
Convenience | 顧客の利便(顧客が入手しやすいか) | 店舗のアクセス・Webサイトの使いやすさ |
Communication | 顧客対話(顧客と企業の対話) | 顧客と企業が双方向で対話できているか |
3C分析

自社商品・サービスの「狙うポイント」を3つの視点からあぶり出すフレームワークです。市場顧客 -> 競合 -> 自社 の順番で考えることがポイント。自社を3つの角度から俯瞰して客観視することを意識しましょう。市場規模や顧客のニーズが十分あり、競合が狙っておらず、自社の強みが生かせるエリアを見つけだしましょう。
Customer | 市場・顧客(ターゲットについて) | 市場の規模、成長性 顧客のニーズ、消費行動 |
Competitor | 競合(ターゲットの狙い方) | 市場シェア、強み弱み、評価 |
Company | 自社(ターゲットの狙い方) | 市場シェア、強み弱み、評価 |
SWOT分析

自社商品・サービスの「プラスをより伸ばし、マイナスはカバーする」戦略を発見するフレームワークです。内部環境(自社でコントロールできる条件)と外部環境(自社ではコントロールできない条件)の2軸で、プラス要因マイナス要因を書き出し、それぞれの枠を掛け合わせることで戦略強化を検討します。
内部環境は4P分析の結果から、外部環境は3C分析の結果から検討するとスムーズです。
内部環境 | プラス要因 | 強み | 伸ばしたい強み |
マイナス要因 | 弱み | 克服したい弱み | |
外部環境 | プラス要因 | 機会 | 狙いたいチャンス・勝機 |
マイナス要因 | 脅威 | 狙いたいチャンス・勝機 |
例)
【内部環境:弱み】競合に比べて商品が割高である
×
【外部環境:機会】生活費に余裕があるユーザーがメイン顧客である
= 客層の質が良い
ロジックツリー(KPIツリー)

自社商品・サービスについて「戦略の目標値と売上」を数値で結びつけて管理するフレームワークです。マーケティング戦略を実施する前に設定し、実施後に効果測定するときに使いいます。問い合わせ数(CV数)と売上が直結しているので、現場と経営層の意思疎通を円滑にしてくれます。
はじめての方は、とりあえず項目を埋めてみることをおすすめします。埋め始めると「こんなパターンもあるんじゃないか?」「これじゃ辻褄が合わないな……」など気づきが生まれてくるはず。その気づきが、マーケティング戦略の第一歩です!
6.マーケティング戦略の事例紹介
最後は他社事例をご紹介します。
マーケティング戦略をきちんとしていたからこそ「間違えなかった戦略転換」「乗り越えられたハードル」、マーケsティング戦略を見誤り「間違えてしまった競合調査」の事例3つです。
- ユーザーは商品やサービスにだけ価値を感じているとは限らない
- 限られたポジションを奪い合っている本当の競合はどこか
- 伝え方を変えただけで作り出せた新しい価値感
①ユーザーは商品やサービスにだけ価値を感じているとは限らない

ミスタードーナツは~2006年頃まで、競合は同業種のドーナッツ屋さんではなく、100均ショップだったお話
当時ミスタードーナツではポイントが貯まるとオリジナルのお弁当箱やマグカップ、ぬいぐるみなどど交換ができました。しかしあるときから売上は下がってきてしまいます。「100均ショップ」が流行りだし、それなりにおしゃれな小物がたった100円で手に入るようになったのです。
ドーナッツではなく、オリジナルグッズというおしゃれな小物が目当てで購入していたユーザーは、わざわざミスタードーナツで手に入れる理由がなくなってしまったのです。この市場の変化を受けて、ミスタードーナツはオリジナルグッズ戦略を~2006年で終了しました。
ユーザーが自社商品やサービスのどこに価値を感じているのか、正しく認識できていたからこその戦略転換だったと思います。
②限られたポジションを奪い合っている本当の競合はどこか

ドーナッツ繋がりでもう一つ。
朝の出勤時で片手にコーヒー、もう片方の手にスマートフォンというのはよく見かける風景です。海外でのお話になりますが、少し前はコーヒーにドーナッツが主流でした。そこで某コンビニは日本でもこの「コーヒーにドーナッツ」を流行らせようとします。ですが、このタイミングでスマートフォンがでてきてしまうのです。
手は2本しかありません。この2席しかないポジション取りに、ドーナッツは負けてしまったと言われています。そのためドーナッツは、コンビニのホットスナック売り場からは姿を消し、パン売り場に置かれるようになりました。
日本の朝の出勤光景「コーヒーにスマートフォン」をもう少し検討できていれば、このドーナッツ戦略はもっと別の形になっていたかもしれませんね。
同じような事例ではNetflixがあります。
Netflixは動画サービスですが、競合をAmazonプライムビデオ、Hulu、DAZN などの同じ動画サービスとはしていません。本当の競合は、TVやゲームなど余暇時間を消費する娯楽サービス全般だとしています。
③伝え方を変えただけで作り出せた「新しい価値感」

なくても生きてはいけるけれど、あると生活が豊かになる。そんな新しい価値をウォーターサーバーで作ったお話。
最近ではウォーターサーバーが家や職場にある方も多いのではないでしょうか。水道があるのに水がでる機械を買うなんて少し前なら考えられないことでした。しかし使ったことがある人なら実感しているはずです。水を沸かさなくても直ぐ出る熱湯、氷を入れなくても直ぐ出る冷たい水。コーヒーを飲む、カップラーメンをつくる、白湯で薬をのむ、赤ちゃんのミルクをつくる、これらがさっとできるのです。
ウォーターサーバーはこのスキマ時間を短縮することで、当たり前だと思われていたストレスを取り除きました。「水にお金を出すなんて」という高いハードルを、「豊かな生活のために時間を買う」という新しい価値感を提示することで乗り越えたと言われています。
マーケティング戦略で成功した事例、失敗した事例をご紹介しました。こうして他社事例にふれると、マーケティング戦略やる意味、やらないリスクが実感できますね。
7.まとめ
マーケティング戦略に正解はありません。泥臭く集めた情報や数値から、ベストな戦略を組み立てて実行して、都度ふりかえる。この繰り返しが大切です。
近年のマーケティングが抱える課題は山積みですが、顧客に選ばれるためにはを地道に考えてマーケティング戦略を検討していきましょう。
また下記のようなご要望があれば、お気軽に問い合わせフォームからご相談ください。
「わからないことを直ぐに聞ける相談相手が居てくれたら……」
「レポートから戦略まで落とし込んでくれるアドバイザーがほしい」
・2H/隔週 の定例MTGに出席してアドバイス
・10H/月 の相談窓口
など、ご状況に合わせてご相談にのらせていただきます。